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ESPの限界とModified ESP(1)

2020/5/14   2020/12/26復元

 

 

 

これから数回にわたって

 

 

『ESPの限界とModified ESP』という話をしていこうと思います。

 

 

実は、昨年秋ごろからこの内容を書きたくて書きたくて仕方なかったんですが

 

 

論文などいくつかの制約があってこの時期まで伸びてしまいました。

 

 

 

 

まず、ESP(脊柱起立筋面)ブロックについては以下の記事も参照してください。

 

 

→ Erector Spinae Plane Block

 

→ Erector Spinae Plane Block (2)

 

 

 

ESPブロックは、2016年に報告された手法で

 

 

胸椎の横突起と、脊柱起立筋の間のplaneに薬液を注入すると

 

 

傍脊椎腔まで薬液が浸潤し、傍脊椎ブロックと同じ効果が得られるというものです。

 

 

難しい傍脊椎ブロックが、これなら簡単に行えるぞ!!と

 

 

爆発的なヒットを飛ばしたブロックです。

 

 

もちろん現在も世界中に熱狂的な信者を抱えるモンスターブロックといえるでしょう。

 

 

 

 

しかし、その効果とは裏腹に、当初からこんなパラドックスがありました。

 

 

海外のCadaver Studyでは、めちゃくちゃ効率よく傍脊椎腔に薬液が入っているのに

 

 

日本で、ご遺体を用いて色素を注入しても傍脊椎腔にはなかなか入らないという事実。

 

 

海外では、ESP単独でいろいろな手術ができちゃうけれど

 

 

日本の研究では例えば胸骨の両脇(前枝領域ですね)の鎮痛が得られないといった結果がでてしまう。

 

 

 

 

そんなわけで、かなり最初のうちから

 

 

日本の神経ブロックのパイオニアたちの間では

 

 

「実はESPは効かないんじゃないか」

 

 

「ESPは傍脊椎腔には入らないんじゃないか」

 

 

と言われていました。

 

 

(なんか、QLBみたい・・・)

 

 

 

 

 

ESP(2)の記事にも書きましたが

 

 

実際に、筆者自身もESPを4回注射してもらい

 

 

その効果が論文で言われているようなものでない事を自ら体験します。

 

 

内科の先生方が「新しい薬は自分で飲んでみる」なんて話を聞きますが

 

 

わからないものは、あれこれ考えるよりも自分で体験してみるのが一番です。

 

 

 

 

この頃 ペインクリニック別冊秋号 Vol.39 に執筆したように

 

 

ESPの本態は

 

 

薬液が傍脊椎腔へ入るのではなく

 

 

薬液が外肋間筋の外側を広がって、外側皮枝まで効いているのではないか

 

 

という意見が、日本のパイオニアたちの間でささやかれるようになります。

 

 

 

 

この仮説は、おそらく概ね合っていたと感じます。

 

 

これを支持するような(傍脊椎腔へは入らず、側方へ色素が移動するとする)論文もいくつか出ました。

 

 

しかし、欧米の熱狂的ESP信者からは

 

 

実験系がおかしいとか、いちゃもんを付けられるだけで最初は信じられませんでした。

 

 

 

 

しかし、2019年になると

 

 

欧米でも「ESPは効かない」とする発表も散見されるようになり

 

 

もちろん「ESPはすごく良く効く」という論調が主なのですが

 

 

ESPは当初言われていたよりも

 

 

効果が弱いのではないか・・・という考えが出てきます。

 

 

 

 

日本のパイオニアたちの間では逆に

 

 

「ESPは傍脊椎腔へは入らない」から

 

 

「外肋間筋の外側を広がって外側皮枝までブロックするのがメインだが、傍脊椎腔にも入る」

 

 

というように変わっていきます。

 

 

 

 

実際に、ご遺体を用いた研究から

 

 

薬液を注入した、その注入部位の傍脊椎腔には入りそうだ

 

 

ということが分かってきました。

 

 

Key factorは、注入圧なのか注入量なのかわかりませんが

 

 

実際に傍脊椎腔にも入るようです。

 

 

そして、薬液がどこを経由して傍脊椎腔に入るのかという事については

 

 

以前から言われていたように

 

 

入口は「Costotransvere Foramen」だろうというのが通説です。

 

 

これは幾つか論文もでており、正しそうです。

 

 

Costotransverse Foramenとは

 

 

脊髄神経の後枝と、それに伴走する動静脈が走る孔です。

 

 

すごい狭い孔ですよね。

 

 

 

 

当初、欧米の先生が

 

 

ESPは呼吸により胸郭が陰圧になることで、その陰圧に引かれて

 

 

Costotransverse Foramenから傍脊椎腔へ入るのだ

 

 

と言っていたと聞きました。

 

 

筆者は信じていませんでしたが

 

 

今では、Costotransverse Foramen説が正しいとすると

 

 

あながち間違いではないのだろうと感じます。

 

 

 

 

でも、実際に自分で体験してわかったことですが

 

 

筆者もESP受けた後ちゃんと呼吸してましたよ・・・

 

 

呼吸してたけど全然効かなかったのはなんでだろう?

 

 

ESPが傍脊椎腔へ入るにはやはり

 

 

注入圧とか持続的な薬液の供給など、他の要素が必要なのかもしれません。

 

 

 

 

「薬液を注入した位置では傍脊椎腔に入る」という

 

 

日本のパイオニアの先生方の感覚はきっと正しいです。

 

 

やっぱりね、日本人は器用で技術が高いです。

 

 

パイオニアの先生方はその中でもトップです。

 

 

おそらく傍脊椎腔へ薬液を入れるカギは

 

 

単回投与ではきっと注入圧でしょう。

 

 

 

 

では、なぜ海外のESPはよく効くのでしょう?

 

 

日本だって「ESPすごくよく効いた」って発表も多いですね。

 

 

でも、ESPあまり効かないよねって言ってる人たちが確かにいます。

 

 

その違いはなんでしょう?

 

 

これも当初からいわれていたことですが

 

 

「ESPって人によってやり方が違うんじゃないのか」

 

 

ということです。

 

 

 

 

そして、神経ブロックが上手で有名な先生方が

 

 

「ESP効かない」って言っていたのは

 

 

なぜなんだろう。

 

 

 

 

これが筆者の一連の研究の出発点になりました。

 

 

そして、誰かが聞いたら怒り出しそうな仮説をたててしまいます。

 

 

『ブロックが上手くない人ほどESPはよく効く』

 

 

問題発言です。

 

 

わかっています、ごめんなさい。

 

 

でもこれが、Modified ESPと言われるブロックの本態に他なりません。

 

 

神経ブロックがうまい先生ほどESPは効かないと言ってるのですから

 

 

これしかないんです。

 

 

 

 

ESPブロックを効果的に効かせるにはどうしたらいいのでしょう。

 

 

さぁ、ESPの限界とModified ESP(2)でこの仮説の真意を掘り下げていきましょう。

 

 

→ ESPの限界とModified ESP(2)

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