エコーガイド下末梢神経ブロックの画像・動画

Costotransverse Foramen Block

2020/7/19

 

 

 

名古屋大の柴田先生らのグループが

 

Costotransverse Foramen Block

 

というブロックを新たに報告されました。

 

→ Pain Physician 2020;23:E305-E314

 

 

 

実はこのブロック

 

ESPの限界とModified ESP(3)の記事で紹介した

 

エコーがなかった時代のブラインドPVBとして説明した技術とほぼ同義といっていいでしょう。

 

とても曖昧であったこの手法を、エコー下で詳細に研究し

 

エコーガイド下神経ブロックとして昇華させたものと言えるのではないでしょうか。

 

さすが傍脊椎ブロック(PVB)の大家である、

 

柴田先生ならではの素晴らしい仕事だと思います。

 

 

 

論文はフリーアクセスなので

 

詳細の説明はいらないですね。

 

 

 

つまり、注入位置はMTPブロックよりも内側で

 

Retrolaminar Blockよりも外側のところ。

 

上肋横突靱帯(SCTL)を貫かず、より背側(浅い部分)で投与するものです。

 

すなわち筋注。

 

筋注しているにも関わらず

 

傍脊椎腔へ効果的に薬液を供給できています。

 

傍脊椎腔に直接投与するPVBとほぼ同じくらい広範囲に

 

薬液が広がっているのではないでしょうか。

 

 

 

 

柴田先生がどう考えられているかは知り得ないのですが

 

筆者の個人的な意見としては

 

このCostotransverse Foramen Blockは

 

Modified ESPブロックの最後の1ピースだと思っています。

 

 

 

MTP Block

 

Costotransverse Notch Block

 

Costotransverse Foramen Block

 

Retrolaminar Block

 

 

 

Costotransverse Notch Blockだけは

 

若干、毛色が違って関節内注入ではありますが

 

これら全てが

 

ESPブロックよりも深く、

 

かつSCTLよりも浅い位置で注入するブロックです。

 

 

 

Costotransverse Foramen Blockの論文をみるとわかりますが

 

実際はCostotransverse Foramen Blockに限らず

 

これらModified ESPブロックは全て

 

本当にPVBと遜色ないくらいに広範囲に効くんです。

 

MTPブロックの原著論文では傍脊椎腔には広がりにくいって書いてあるんですが

 

そんなことないと思います。

 

実際にやってみると、とても良く効きます。

 

 

 

筆者のJCAの論文(→ PubMed)の通り

 

筋膜を介してかなり大量の薬液が傍脊椎腔へ浸透します。

 

これがModified ESPブロックの効果が高い理由です。

 

 

 

また、別の論文(→ PubMed)および

 

ESPの限界とModified ESP(3)の記事の動画で示した通り

 

Modified ESPブロックでは

 

PVBを行ったときと同様に

 

薬液の投与とほぼ同時に臓側胸膜が落ち込みます。

 

 

 

『ESPの限界とModified ESP』の4つの記事でも述べましたが

 

この薬液とほぼ同時におこる胸膜の落ち込みはですね・・

 

Costotransverse Foramenという激狭の孔を通るのでは説明ができないのです。

 

Costotransverse Foramenは

 

ESPブロックで投与された薬液が傍脊椎腔へ達する際に通るとされる孔です。

 

この孔は脊髄神経の後枝と、それに随伴する動静脈が通るものです。

 

とても狭い孔です。

 

 

 

実は、Modified ESPブロックの本態は

 

Costotransverse Foramenではなく

 

傍脊椎腔の背側を形成する筋肉の筋膜を介して

 

かなり早い速度で薬液が浸透することで

 

傍脊椎腔に広がることです(それが胸膜の落ち込みとして観察されます)。

 

 

 

この記事のメインテーマの

 

Costotransverse Foramen Blockも

 

薬液の投与とほぼ同時に胸膜が落ち込みます。

 

やってみてください。

 

このブロックは注入位置がけっこう内側なので

 

症例によっては胸膜が観察しづらいこともありますが

 

MTPブロックやCostotransverse Notch Blockなどと同じように

 

胸膜の動きが観察されます。

 

 

 

論文ではCostotransverse Foramenを介して傍脊椎腔へ入ると説明されていますが

 

もちろんCostotransverse Foramenも介するでしょうけれども

 

薬液のほとんどは筋膜を介して傍脊椎に入ると思います。

 

筆者がCostotranverse Notch Blockなんかを発表した時もそうだったんですが

 

ESPを否定することはもちろん

 

Costotransverse Foramen以外を通るなんて言ったら

 

論文通らないんですよ。

 

 

 

筆者も、最後の最後で筋膜を介した(Membrane-mediated)傍脊椎への移行が起こるという内容を出しましたが

 

それまでの論文は全て

 

Costotransverse Foramenを通るって書きました。

 

絶対違う・・・って思いながら。

 

 

 

ESPを否定したり

 

Costotransverse Foramen以外を通るなんていう

 

ESP教団の教えに反する内容になるとですね

 

「それは違う」という文とともに

 

速攻でリジェクトくらいます。

 

おもしろいくらいに。

 

 

 

その点でいうとJCAのレターって

 

門戸を広く開いていて

 

(まぁ、おかげで変な論文も時々あるんだけど)

 

TAPAブロックだったり

 

先進的な内容も結構しっかり取り上げてくれるんです。

 

今年のIFのバカ上がりはそれなんだろうと

 

個人的に思います。

 

 

 

話がそれましたね。

 

Costotransverse Foramen Block

 

Modified ESPブロックの最後の1ピース

 

とても有効なブロックだと思います。

 

 

役立つリンク集

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