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TAPAブロックのウソとホント

2022/8/25

 

 

TAPAブロック・・・・このサイトをご覧のみなさんは、もう当たり前に知っているブロックになっているのではないでしょうか?

 

 

Tulgarらによって発表された方法で

 

 

T10の肋軟骨部で薬液を投与することで、1カ所(両側で2カ所)穿刺するだけで腹部全体の鎮痛が得られるという

 

 

と〜〜〜っても素晴らしい方法です。

 

 

 

 

 

 

し    か    し    !!

 

 

そんなうまい話ないでしょー!っていうのが今回のお話です。

 

 

昨年この内容で、学会やらセミナーやらで講演したので、それを聞いてくださった人は分かってますよね?

 

 

今回、やっとこの内容を含めた論文がパブリッシュされたので、さらに掘り進んでお話したいと思います。

 

 

詳細気になる方は、この論文(PubMed, Springer)を読んでみてください。

 

 

また、以下の説明には

 

 

同時にパブリッシュされたEditorialsのFigure 1が良くまとまっているので、これを使いたいと思います。

 

 

『Editorialsの論文』はフリーなので、ダウンロードして参照しながら読んでいただくと分かりやすいと思います。

 

 

 

 

 

 

このEditorialsのFigure1のように、腹部の知覚は『前枝』『外側皮枝』によって支配されています。

 

 

体表面では、これらの境目は鎖骨中線上(Nippleを通る線でもあり、腹直筋の外側縁:Semilunar lineもここにある)となります。

 

 

前枝は、いわゆる腹横筋膜面を通りながら、腹横筋と内腹斜筋を支配し、腹直筋を貫いて体表へ現れます。

 

 

一方、外側皮枝は前鋸筋があるあたり、神経(Th)の高さによって差はありますが

 

 

中腋窩線付近で肋間筋を貫き、そして外腹斜筋も貫いて、体表へ現れます。

 

 

外側皮枝は、体表(側腹部)を走行しながら、外腹斜筋へ枝を出し、外腹斜筋も支配します。

 

 

 

 

 

さて、TAPAブロックを考えていきましょう。

 

 

※ TAPAブロックの詳細については、教科書改訂第4版にまとめてありますので、適宜参照してください。

 

 

 

オリジナルのTAPAブロックは、1st injection2nd injectionに分かれます。

 

 

1st injectitonは肋軟骨の下・・・筋層としては、腹横筋と内腹斜筋の間に投与するものです。

 

 

これはTAPブロックと同じ層なので分かりやすいですね。

 

 

そして、2nd injectionは肋軟骨の上。肋軟骨と外腹斜筋の間に投与します。

 

 

この2つのブロックを行うのがオリジナルのTAPAブロックです。

 

 

なお、1st injectionのみを行う方法が後に発表され、Modified-TAPA(M-TAPA)と呼ばれます。

 

 

 

 

このTAPAブロックは、原著によると、と〜〜〜ってもよく効くわけで

 

 

なんと腹部全体!!

 

 

前枝も外側皮枝もまとめて、ひっくるめて、ブロックできるのです!!

 

 

・・・って、そんなわけあるかい!

 

 

 

 

 

ここで、EditorialsのFigure 1Aの図を見てください(DOI; https://doi.org/10.1007/s12630-022-02309-x)。

 

 

TAPAブロックの投与位置が示されていますね。

 

 

 

 

1st injectionはTAPブロックと同じ層でもあるわけで

 

 

前枝にとてもよく効きそうですね。

 

 

 

 

2nd injectionはどうでしょうか。

 

 

さぁ図を見てください。

 

 

そこに、なんの神経が走っているのでしょう?

 

 

そうなんです、何もないところに打っているわけです。

 

 

つまり、2nd injectionは無意味なんですよ!

 

 

やるだけ無駄。

 

 

たしかにね、外側皮枝が貫くところまで薬液が広がるというのならば効くのでしょうけれど・・・

 

 

実際は、広がらないのです。

 

 

 

 

 

昨年の講演を効いてくれた人は知っていますよね。

 

 

私が、自分で自分にTAPAブロックを打っちゃうMad Scientistであることを。

 

 

机上で話していても何もわかりません。

 

 

神経ブロックはね、体験したらわかるんですよ。

 

 

いや、ほんとにね、2nd injectionは効かないですよ。

 

 

 

 

 

 

我々の論文では、そこをしっかり指摘しています。

 

 

そしてさらに、1st injection(=M-TAPA)の効果範囲についても検証しています。

 

 

その結果

 

 

1st injection(M-TAPA)は、T7〜T11の前枝に特に良く効くことが分かりました。

 

 

1st injection(M-TAPA)は、臍周囲に効果が絶大だということがわかります。

 

 

 

 

 

Mad Scientist本人の体験談からしても

 

 

M-TAPAは前枝にとてもよく効きます!

 

 

前枝です。

 

 

前枝だけです。

 

 

お腹中央部の鎮痛効果に優れています。

 

 

 

 

 

 

M-TAPAはとくに臍の鎮痛効果が高いです。

 

 

RSブロックと比べるとどうでしょうか?

 

 

RSブロックも、前枝のブロックです。

 

 

前枝といっても、腹直筋鞘で打つわけですから、前枝の最後の最後ですよね。

 

 

RSブロックのターゲットは、Anterior branch(前枝)ではなく、Anterior cutaneous branch(前皮枝)なのです。

 

 

つまり、M-TAPAはAnterior branchを肋骨弓のレベルでブロックするため

 

 

前枝から出てくる枝(前述のように、この枝は腹横筋や内腹斜筋を支配します)もブロックできます。

 

 

前枝の鎮痛という観点から考えると

 

 

前皮枝のみのブロックとなるRSブロックよりも

 

 

周辺の筋肉を含めてブロックできる、M-TAPAの方が効果が高いということがわかります。

 

 

 

 

 

ブロックを組み合わせて使うような場合には

 

 

盲目的に行うのではなく、神経の走行や、支配域を考えて行うべきです。

 

 

「M-TAPAにRSブロックを追加した」という話をときどき耳にしますが

 

 

あまり意味がないのではないでしょうか。

 

 

M-TAPAに追加するべき神経ブロックは

 

 

外側皮枝のブロックです。

 

 

我々の論文では、新たにEXOPブロックという手法を提唱しています。

 

 

これについては、また次回の更新で述べたいと思います。

 

 

 

 

→外腹斜筋面(EXOP)ブロック

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