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きっと行う機会はない Cervical ESP

2020/7/13

 

 

本題に入る前に前置きのお話から。

 

 

2018年ころのことですが

 

胸部のかなり高い位置で行ったESPブロックは

 

腕神経叢ブロックになりうるということが報告されました(Can J Anesth 2018;65:288-93)。

 

 

頭半棘筋は頭蓋骨からT5あたりまで走行する筋肉で

 

その外側端は横突起上にあります。

 

胸部の高い位置(たとえばT1〜3)に投与されたESPブロックは、この筋肉の外側をひろがり

 

頸部に至ると腕神経叢(ルート)の方まで効く場合があるようです。

 

 

個人的には、ホントかな・・・

 

まぁ、あると思うんですけど、

 

そんな毎回起こるような類の現象ではないだろうと思っています。

 

肩や腕の鎮痛を得るために、わざわざ背中に注射うつこともないでしょうし

 

確かめようとも思っていません。

 

 

ただ一ついえることは

 

頭半棘筋はかなり強固なバリアとして働いているという事です。

 

なぜかというと

 

頭半棘筋より中枢側にいれる

 

Intersemispinal plane block(半棘筋間ブロック)で腕神経叢がブロックされることがないからです。

 

(※半棘筋間ブロックは脊髄神経後枝のブロックとして報告したものです。)

 

 

これは色素注入でも確かめましたし(Can J Anesth 2018;65:958-60

 

自分にも打ってみましたし

 

これまで、頸部の脊椎手術に

 

何百と半棘筋間ブロックを行ってきましたが

 

術後に手が動かなかった症例は皆無です。

 

 

 

もちろん、筋肉のバリアなんてものは「絶対」的なものではないですから

 

外に漏れだすことだってあるでしょう。

 

でも、たとえそこで漏れたところで

 

腕神経叢まで達するかというと、それは別の問題。

 

とりあえず、今のところ経験したことがありません。

 

 

 

ここで話は本題に移りますが

 

最近、Cervical ESPというものが出てきました。

 

頸部C6やC7の横突起(後結節)の先端あたりで投与した薬液は

 

腕神経叢の方まで伝わり

 

腕神経叢ブロックになるというものです。

 

 

先に述べた胸部高位でのESPが腕神経叢ブロックになるというならば

 

C6やC7の横突起の先端(つまり頭半棘筋より外側)に投与したら

 

腕神経叢ブロックになるでしょう。

 

納得です。

 

 

ただ、先ほども言いましたが

 

頭半棘筋より中枢(内側)で投与する(=半棘筋間ブロック)と

 

脊髄神経(C4〜T4)の後枝限定のブロックになりますから

 

その外側で投与するCervical ESPとは

 

明確に区別する必要があります。

 

 

Cervical ESP blockは学問的にはとても有意義です。

 

これまで腕神経叢ブロックといえば

 

もっぱら頸部横突起よりも腹側からアプローチするものでしたが

 

背側からアプローチもできるというわけです。

 

 

しかし臨床的にはどうでしょう。

 

肩〜上肢の鎮痛を得るために

 

あえて後ろからアプローチする利点がありません。

 

通常の腕神経叢ブロックは、神経をエコーで見ながらその傍に投与する至極確実性の高いものです。

 

あえて、背側から横突起(後結節)に投与する必要はありません。

 

また、脊椎手術の鎮痛には

 

脊髄神経後枝がブロックされれば十分(=半棘筋間ブロック)で、腕まで動かなくする必要がありません。

 

 

そういうわけで、薬液の投与位置が頭半棘筋の内側か外測かでブロックの効果は大きく異なり

 

これは臨床的に本当に重要になります。

 

これをLetterしたところ

 

Cervical ESPの著者から思わぬ反撃にあいました(笑) (Pubmed

 

 

もうね・・・びっくりよ。

 

 

 

 

まずは

 

@頭半棘筋の内側で投与(=半棘筋間ブロック)しても腕神経叢がブロックされないとは限らない!

 

というもの。

 

そうですよね。

 

絶対なんてないですよ、そりゃね。

 

 

たとえば腕神経叢ブロックをした時に、大腿神経が絶対ブロックされないなんて私には証明できません。

 

指摘は、この例えと同じレベルだと思いますね。

 

 

 

なので、これはまぁ、そう思うならそう思っておけばいいという程度です。

 

常識的な投与量であれば

 

経験的に絶対ブロックされないです。

 

 

ご遺体を用いて色素注入したときですが

 

固定がうまくできてなくて筋肉がトロットロだったとこがありますが

 

それでも腕神経叢やルートまでは達していませんでした。

 

 

 

 

そして

 

Aおまえの図はTPとAPが間違ってる!

 

という指摘。。。

 

ご丁寧に、人体模型に加えて

 

C6レベルの話をしてるのに、なぜかC7レベルの解剖スライスでご指摘くださいました。

 

 

 

 

・・・いや、間違ってないからね(怒)!

 

 

 

 

なんで間違っていないかというと

 

論文につかったエコー画像は自分の頸だから。

 

↑こんなこと言われたから、もう一回確かめたけど

 

やっぱ間違ってなかった。

 

LetterにはTPしか書いていませんから

 

ここでAPも指し示すことにします。

 

末梢神経ブロック,神経ブロック,エコーガイド,動画,画像

 

 

 

APとTPを同一のエコー画像に納めるのって結構難しくって

 

APとTPだけなら何とかなるんですけど

 

筋肉もなるべくうまく見えるようにしなけりゃならない。

 

そうするとかなり画像が限られてきます。

 

本当だと、横突起は上図のLSのLの字の左側くらいまで伸びてるんですが

 

他の構造との兼ね合いでこういう図になってます。

 

実は最初、2枚の写真をつなぎ合わせてFigをつくったんですが

 

これもあまりうまくなくてですね

 

結局、この写真を採用したのです。

 

 

 

それに日本人ですからね。私。

 

APもTPも欧米人からしたら小ぶりでしょうよ。

 

まぁ、確かに

 

この図だとTPが

 

どでかいAPに見えなくもないんですけど。。

 

 

 

 

Cervical ESPについて

 

何も文句言ったわけではないんですけどね

 

こんな反撃してくるなんて○○悪くないですか!?

 

何が気に入らなかったのかなぁ。

 

いやだわ。

 

 

まぁ、言いたかった重要なことはLetterで言えてるので

 

イラっとするけど、この反撃はスルー。

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