IPACKブロック

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IPACKブロック

2019/9/10　　　2020/12/27復元

膝関節全置換術（TKA)の鎮痛として何を行っているでしょうか？

EPIの施設もあるでしょうし、

ブロック＋IVPCAのところもあるでしょう、

関節内注入の施設もあるでしょう。

我々の施設では

当初は「持続大腿神経ブロック＋選択的脛骨神経ブロック」

で行っていました。

TKAの痛みに関わる坐骨神経領域（主に脛骨後面）は脛骨神経の支配であり

総腓骨神経をブロックする必要はありません。

ですので選択的に脛骨神経だけブロックしてやれば良いわけです。

神経ブロックは、より末梢へ、より選択的にという方向へ進化していますので

まずは大腿神経ブロックの代わりが出てきました。

大腿四頭筋までブロックする必要はなく

「伏在神経」と「内側広筋に行く枝」だけブロックすればよいので

内転筋管ブロックが有効とされました。

しかし、解剖学的な「内転筋管」には伏在神経しか走っておらず

もっと中枢側でのブロックが必要です。

そこで出てきたのが大腿三角ブロックです。

詳細はテキストを参照してください。

現在は、ここにカテーテルを挿入し、持続大腿三角ブロックを行っています。

※ 最近は、内転筋管ブロックと言うと「大腿三角ブロック」を指すことが多いです。

選択的脛骨神経ブロックの領域にも、より選択的な手法が現れました。

それがIPACKブロックです。

IPACKとは

Infiltration between the Popliteal Artery and Capsule of the Knee

です。

読んで字のごとく、大腿動脈と膝関節の間に局所麻酔薬を注入する手技です。

エコーの当て方、刺入の仕方は

選択的脛骨神経ブロックや坐骨神経ブロック膝窩アプローチとほぼ同じです。

ただ、それらよりも目的の注入部位は深いです。

まず、エコーを膝の皺の部分に当ててみましょう。

大腿骨は、膝関節の部分で二股にわかれますね。

そのViewが描出されるのではないでしょうか。

刺入するのは、この部分でも良いのですが

この位置では、大腿骨も鷲爪のようになっていますし、ベーカー嚢胞などが出ていたりするので

少し頭側へチルトし、大腿骨が平らになったところがオススメです。

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このように、IPACKブロックでは大腿骨と膝窩動脈の間に

局所麻酔薬を20～25 mL程度注入します。

実際にご遺体を用いて解剖してみましたが、

脛骨神経から100 マイクロメートルほどの細い神経が分岐し

膝窩動脈の周囲を巻き込むように走行し

膝関節へ分布することがわかります。

（極細の神経で、膝窩動脈と一体化しているので雑に解剖すると全くわからないままおわります。もし解剖する機会があったら見てみてください。）

この膝関節を支配する神経の通り道に薬液を注入するので

膝関節のみを鎮痛することが可能です。

おもしろいことに、20 mLというなかなか大量の局所麻酔薬を注入するのにも関わらず

他の脛骨神経領域、総腓骨神経領域はブロックされません。

下の動画は

当院での左足TKA後、病棟に帰ってすぐの患者様の動画です。

鎮痛は持続大腿三角ブロック＋IPACKブロックです。

鎮痛がしっかりとれており、かつ内側広筋以外の筋肉の運動が保たれています。

※同意を得て掲載しています。

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