Inter-semispina plane (ISP) block
2017年に筆者らは、
Multifidus Cervicis Plane (MCP) Block <頸多裂筋面ブロック>を報告しました。
→ PubMed
これはTLIPブロックを参考にして開発した
頸部の脊髄神経後枝内側枝をブロックする手技です。
論文に記載した通り、
頸部の脊椎手術(椎弓形成など)において、
フェンタニルを全く使用せず
神経ブロックのみ(術後の肩こり痛やHead Pinに対して、アセリオやロピオンは使用しますが)で
強い鎮痛効果が得られます。
通常は、IVPCAなどを使用すると思いますが
神経ブロックのみで大丈夫です。
もちろん神経ブロックに加えて、フェンタニルを使用したりIVPCAを追加すると
さらに強力な鎮痛効果になります。
しかし、高齢者の多い脊椎手術では
頸多裂筋と頸半棘筋がエコーで描出しにくい症例があることが
わかってきました。
おそらく、加齢による筋肉の変性などが原因ではないかと考えています。
そこで、神経の走行や薬液の広がりを考慮し
より浅層で行う
Inter-semispinal plane (ISP) block <半棘筋間ブロック>
を考案しました。
→ PubMed
年齢に関わらず、頸半棘筋と頭半棘筋の筋間は
エコーで非常に視認しやすいため
頸多裂筋のように深層が見えない症例でも
安全に、かつ簡単に施行できます。
効果と麻酔範囲は、MCPブロックとISPブロックで差がないことがわかりました。
麻酔範囲はC4〜T1-4の脊髄神経後肢に限定されます。
C4の皮枝はC2棘突起の直上くらいまで支配しています。
第三後頭神経や大後頭神経は決してブロックされないことから
C4までがこのブロックの効果範囲となります。
筆者らは、C5棘突起の位置でブロックを行っています。
脊髄神経後肢内側枝の走行と、ISPブロックおよびMCPブロックで薬液を注入する位置を
以下に示しました。
是非ためしてみてください。
なお、このブロックは頸部痛などにも効果があるのではないかと思います。
頸部の凝りや痛みに、このブロックをやってみて
効果があったという
報告をいただきました。
手術麻酔で行う分には
手術後は常に寝ていますし、全く影響ないのですが
ペインクリニックなどで行う場合には注意が必要です。
論文にも書きましたが
頸部の感覚が片側だけ奪われてしまうため
めまいの様な、浮遊感のようなものがあります。
実は研究に先立って、実際に筆者自身も
MCPブロックとISPブロックを体験しました。
その時は、両側一気にブロックしたのではなく、プロトコルどおり片側ずつ行いました。
ブロックした(感覚を奪われた)側に引っ張られるような感覚があります。
わたしはおもしろかったですが
引っ張られた側にぶっ倒れる人もいますので・・・注意してくださいね。
この数年で、脊椎手術につかえるブロックが出そろった感があります。
腰のTLIPブロック
胸部のレトロラミナ、ESPブロック、傍脊椎ブロック
頸部のMCPブロック、ISPブロック
つぎはどんなブロックが出てくるでしょうか?
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