ESPの限界とModified ESP（４）
2020/5/26 2020/12/27復元
これまで『ESPの限界とModified ESP』と題して
つらつらと書いてきましたが、これで最終回です。
いままでの内容は以下を参照してください。
→ ESPの限界とModified ESP（１）
→ ESPの限界とModified ESP（２）
→ ESPの限界とModified ESP（３）
ESPの限界とModified ESP（３）を読んでいて
『あれっ！？』と思ったことはなかったでしょうか？
当初、薬液が傍脊椎腔へ入ると言われていたESPブロックでは
明確な胸膜の落ち込みは観察できませんでした。
ESPブロックでは傍脊椎腔への入り口は『costotransverse foramen』という
脊髄神経後枝とそれに伴走する動静脈が通る孔です。
とても狭い孔ですから
薬液を投与してすぐに胸膜が落ち込まないのは納得できます。
あれ・・・・？
Modified ESPブロックで薬液を投与するとすぐに胸膜が落ち込むのはなぜだろう。
そこです！！
重大な疑問がでてきます。
Modified ESPは傍脊椎腔へすぐに薬液が到達しますが
それはclassic ESPとは異なった経路を通るのではないか？
ということです。
Modified ESPもclassic ESPと同様に『costotransverse foramen』を通って傍脊椎腔へ入るのだとしたら
薬液の投与とほぼ同時に胸膜が下がることはないでしょう。
『costotransverse foramen』はとても狭い孔です。
しかもその孔には、神経や血管が詰まっています。
ESPブロックの薬液が、そんな激狭の孔を通って傍脊椎腔に到達するには
呼吸による胸腔内の陰圧や、注入圧や、持続的な薬液の追加など
その他の因子が必要だろうと考えられています。
とくに「胸腔内の陰圧」という条件は欧米の麻酔科医が特に主張しています。
（今回、筆者の論文をリジェクトしてくれたレヴュアーも、
costotransverse foramenと胸腔内陰圧が基本です、はいダメ―。
的な反応だったので、ESP崇拝には本当に苦労します）
Modified ESPももちろん、『costotransverse foramen』経由でも傍脊椎腔へ入るかもしれません。
でも、そんな狭い『costotransverse foramen』だけを通るとするならば、あの胸膜の落ち込みは説明ができないのです。
Modified ESPブロックには、まだ知られていない傍脊椎腔への経路があるはずです。
これはつい最近、ESP信者の網をくぐり抜けてJ Clin Anesthに出しましたので
そちらをご参照ください。
→ J Clin Anesth doi: 10.1016/j.jclinane.2020.109880.
実は、MTPブロックを代表とするModified ESPブロックでは
内肋間膜を介して直接的に傍脊椎腔へ薬液が浸潤します。
TITC内に投与された薬液は
内肋間膜の脆弱な部分（複数個所）から傍脊椎腔へと染み出してきます。
論文ではその様子を経時的に追った写真を載せています。
論文にはのせていませんが
実際は、動画で内肋間膜からどんどん染み出していく様子を撮っていますので
学会などで機会があるときに流したいと思います。
膜から染み出すというと
例えば、斜角筋間ブロックで中斜角筋内に投与しても筋膜から染み出してブロックされるような現象と似ていますね。
また、こちらの記事（→本当は怖い肋間神経ブロック）に書いていますが
肋間神経ブロックをすると
最内肋間筋から染み出して、傍脊椎腔へ薬液が流れることにも似ていますね。
というか、むしろModified ESPブロックは
ESPブロックよりも肋間神経ブロックに似ているという事になります。
Modified ESPなどと言っていますが
その実態はclassic ESPとは似て非なるものなのです。
ブラインドPVBやレトロラミナブロック、肋間神経ブロックなどがむしろ類縁のブロックと言えるでしょう。
役立つリンク集
関連ページ
- Costotransverse Foramen Block
- 成書『あっという間にうまくなる 神経ブロック上達術』とリンクしたサイトであり、同書で紹介されている末梢神経ブロックに関して動画・画像や補足事項を紹介します。
- ESPの限界とModified ESP（１）
- 成書『あっという間にうまくなる 神経ブロック上達術』とリンクしたサイトであり、同書で紹介されている末梢神経ブロックに関して動画・画像や補足事項を紹介します。
- ESPの限界とModified ESP（２）
- 成書『あっという間にうまくなる 神経ブロック上達術』とリンクしたサイトであり、同書で紹介されている末梢神経ブロックに関して動画・画像や補足事項を紹介します。
- ESPの限界とModified ESP（３）
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- Erector Spinae Plane Block (2)
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- 傍胸骨で行うブロックあれこれ
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