Bezold-Jarisch反射のお勉強
本書では<コラム2>でBezold-Jarisch反射を紹介しています。
そもそもBezold-Jarisch反射とはどういうものなのでしょうか。
Bezold-Jarisch反射は以下に示すような反射経路によって
中枢性の交感神経抑制と副交感神経刺激(迷走神経)が起こり
血管拡張による血圧低下と、徐脈を起こす状態です。
心室壁の機械受容体
↓
迷走神経求心路
↓
延髄孤束核、血管運動中枢、迷走神経核
↓ ↓
↓ 心臓迷走神経
↓ ↓
交感神経延髄脊髄路 心拍数低下
↓
血管拡張
心室壁の機械受容体が関与していることから想像できるように
心筋梗塞(とくに下壁)に伴うことが多いものです。
それがなぜ鎖骨や肩の手術で生じるのでしょうか。
これらの手術における体位は、半坐位が選択される場合があります。
これが反射の引き金になります。
この体位をとることによって、体内循環血液が脚にプールされ
静脈還流量が低下します。
これに対し、通常は圧受容体反射が起こり
交感神経の緊張と、副交感神経の抑制によって
心収縮力・心拍数の増加と血管抵抗上昇を起こし、血圧を保とうとします。
しかし、この圧受容体反射が静脈還流が低下した状態で起こった場合
過剰な心収縮力増加によって、心室の機械受容体が刺激され
上記のような反射回路が回ってしまうのです。
ただ、通常は静脈還流量が低下したからといって
そうそうBezold-Jarisch反射が起こるものではありません。
これにはもう一つ重要な引き金があります。
患者の意識です。
手術室という場所、これから手術されるという緊張
これらによる交感神経の緊張状態が
静脈還流の低下と合わさって
過剰すぎる心収縮力増加を引き起こします。
つまり、同様な状況であれば
鎖骨や肩の手術でなくてもBezold-Jarisch反射は起こります。
しかし、鎖骨や肩を神経ブロックのみで手術するような場合が
状況としては多いのではないでしょうか?
この反射を起こさせないための対処法は
テキストに記載したとおりです。
この反射の存在を知って、正しい対処さえ行っていれば
全く恐れるものではありません。
実際に起きてしまったBezold-Jarisch反射について
こちらに記事をのせていますので是非参考にしてください。
※テキスト内(第1版)に一部、記載の誤りがありますので、『正誤表』もご参照ください。
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