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実際に起こったBezold-Jarisch反射

ここでは、実際に起こってしまったBezold-Jarisch反射の例をご紹介します。

 

Bezold-Jarisch反射については、「テキスト」および「こちらの記事」も参照してください。

 

 

これは、私の外勤先での症例です。

 

30代の男性で、下腿骨折後の抜釘でした(仰臥位)。

 

その施設では、自科(つまり整形外科)が脊椎麻酔を行い、看護師が管理をしています。

 

そのため、すべて後日談として聞いたことになりますが、

 

あまりにも典型的なBezold-Jarisch反射だったのでご紹介したいと思います。

 

 

脊椎麻酔自体は何も問題なく行われたようです。

 

その後、オペが開始されました。

 

オペ中の輸液・バイタル管理は、整形外科が行いますが、手術に入っていますので

 

実際は、外回りの看護師が調節しています。

 

 

ここで起こった最初のピットフォールは

 

脊椎麻酔後に輸液がしぼられていたことです。

 

その施設は、ERASが積極的に行われていないので

 

術前も結構カラカラで入ってきます、残念ながら。

 

そこに、脊椎麻酔で血管がひらき、輸液がしぼられるという

 

Bezold-Jarisch反射の温床となる、循環血液量の減少が起こっていたわけです。

 

患者は若かったので、血圧自体は正常に保たれていたのでしょう・・・表面上は。

 

 

そして第2のピットフォール。

 

看護師に聴取したところ、患者は起きていたそうです。

 

Bezold-Jarisch反射の条件がそろいました。

 

手術室という、普段ではありえない状況に

 

自然と緊張が高まります。

 

きっと、骨折のオペのときは全身麻酔だったのではないでしょうか?

 

初めて身近に感じる手術室の雰囲気、器械の音、足元で何かされているという不安・・・

 

そして、Bezold-Jarisch反射が起こりました。

 

その直前、患者は何か呟くような、不穏な言動があったそうです

 

その直後、心拍数が30台に急降下しました。

 

 

現場の看護師は、あわてて常勤麻酔科医をコールしました。

 

幸い、すぐに麻酔科医Aが駆けつけました。

 

麻酔科医Aさんが、入室したとき、患者の心拍数はいまだ30台だったそうです。

 

これは大変!

 

と麻酔科医Aさんは、アトロピンを1A 静注しました。

 

 

とても「自然な」対応だったと思います。

 

いきなり呼ばれた先で、患者が徐脈で

 

わけがわからないけど、とりあえずアトロピン。

 

きっと難しいはずです。

 

この状況でBezold-Jarisch反射と気づくのは。

 

 

でも、テキストをしっかり読んでいる方々はもっと重要なことに気づかれていることでしょう。

 

本症例最大のピットフォール!

 

アトロピンが禁忌であることに!!

 

交感神経の過緊張状態に

 

交感神経を活性化してはいけないのです。

 

この直後、患者は心停止してしまいます。

 

 

もともと元気な若い患者さんですから

 

迅速なCPRによってすぐに心拍は再開し

 

何事もなかったかのように退院されたそうです。

 

 

この反射は、まず知っていなければ防げません。

 

今回のように、麻酔科医がトドメをさすことになってしまいます。

 

そして積極的にそれを疑ってかかるということです。

 

 

今回は、いくつもピットフォールがありましたが

 

麻酔科医としてはどうするべきだったのでしょうか。

 

患者の意識はとんでいたかもしれませんが

 

心拍数は30台で、かろうじて保たれていたわけですから

 

Bezold-Jarisch反射を疑うことができれば

 

輸液を全開にして静観し (まず血管内ボリュームを戻す)

 

落ち着いたところでDEXやミダゾラムで鎮静してあげれば良かったのでしょう。

 

 

この様な状況は、結構あり得ることだと思います。

 

田舎の病院では、麻酔科医が居ないところも沢山あることでしょう。

 

でも麻酔科医がいる病院では、是非未然に防ぎたいですね。

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