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SIPB/SPBとPECSブロックについて

Serratus-intercostal plane block(SIPB)/Serratus plane block(SPB)とPECS IIブロックについて補足します。

 

 

PECS I/PECS II ブロック、Serratus plane block(SPB)はともにBlancoらによって発表されたブロックです。

 

 

最初に発表されたPECS I ブロックについては、テキストにも記載したように

 

その有効性については疑問のあるところです。

 

 

その後、BlancoらはPECS II ブロックを

 

Rev Esp Anesthesiol Reanim. (2012) 59; 470-5. <文献1>にて

 

Serratus plane block(SPB)を

 

Anesthesia (2013) 68; 1107-13.<文献2>にて

 

それぞれ報告しています。

 

報告されてからまだ日が浅いことも要因の一つですが

 

インターネットでこれらのブロックを検索すると、局所麻酔薬の注入位置が

 

誤っているものが散見されます。

 

 

<文献1>でBlancoらはPECS II ブロックの注入位置を

 

under Pectoralis minor muscle above the serratus muscle”と記載しているように

 

小胸筋と前鋸筋の間(=前鋸筋の上)に注入します。

 

PECS II ブロックの薬剤注入位置がインターネット上で曖昧になっているのは

 

<文献2>でPECS II ブロックを説明する模式図において

 

前鋸筋の下に注入している誤った図が掲載されてしまったことが

 

発端かと思われます。

 

ただ、テキストを読んでいただいた方々は、

 

注入位置が前鋸筋の下だとしても、おそらく効果自体は得られるのだろうな

 

ということがご理解いただけるかと思います。

 

 

続いて、Serratus plane block(SPB)について考えていきます。

 

Blancoらは<文献2>で局所麻酔薬を

 

前鋸筋の上と下で注入して、その効果を検証しています。

 

それによると、前鋸筋の上で注入した方が、薬剤の広がりや効果時間が優れているようです。

 

 

しかし、文献等で示されているわけではないですが、

 

長胸神経が前鋸筋の表層(上)を走行しており翼状肩甲の合併症が起こりやすいであろうことや

 

前鋸筋の下のplaneの方が脈管構造が少なく安全性が高いであろうという点が

 

かねてから指摘されていました。

 

 

前鋸筋の上下両方のplaneで注入したものを比較し、

 

前鋸筋の上のplaneの方がeffective”としたBlancoらに対して

 

前鋸筋の下で局所麻酔薬を注入する報告は増えてきており

 

例えば、

 

Fajardo M, et al. Cirugia Mayor Ambulatoria (2012) 17; 95-104.

 

では「serratus-intercostal plane block

 

Lopez-Matamala B, et al. Med Intensiva (2013) 16; 222

 

では「thoracic interfascial plane block

 

Kunhaudulla NP, et al. Pain Physician. (2013) 4; E553-5.

 

では「serratus anterior plane block

 

などと、それぞれ勝手な名前をつけてしまっており

 

前鋸筋の下のplaneに注入する手法の名称については

 

もはやグレーゾーンになってしまっています。

 

 

テキストでは前鋸筋の下のplaneで局所麻酔薬を注入する方法を紹介しており

 

Serratus-intercostal plane block/Serratus plane block → SIPB/SPB

 

と記載しています。

 

合併症やブロックの有効性を含めて

 

どちらの方法が良いのかについてはこれから検討が加えられていくものと思われます。

 

 

前鋸筋の上のplaneで薬剤を注入する

 

PECS II ブロック や Serratus plane block は

 

その特性上、翼状肩甲(長胸神経麻痺)などを呈する可能性は否定できません。

 

この可能性については、また別のページで補足しようと思います。

 

 

前鋸筋の上のplaneで薬剤を注入するのも良いでしょう。

 

前鋸筋の上か下か・・・現在はcontroversialとしか言いようがありません。

 

ただ、これらのブロックの有効性が高いということは

 

実際の臨床経験から保証いたします。

 

 

なお、SIPBについては

 

臨床麻酔2015年5月号に、症例報告 『前鋸筋−肋間筋面ブロックによる胸腔鏡手術』

 

英題 『Serratus-intercostal Plane Block for Video-associated Thoracic Surgery』

 

が掲載されました。興味のある方は是非ご一読ください。

 

→ J Clin Anesth (2015) 39; 723-6.

 

麻酔2015年6月号に、臨床経験 『前鋸筋−肋間筋面ブロックによる乳房手術』

 

英題 『Serratus-intercostal Plane Block for Breast Surgery』

 

が掲載されました。興味のある方は是非ご一読ください。

 

→ Masui (2015) 64; 610-4.

役立つリンク集

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